「国宝 鳥獣戯画のすべて」展 at 東京国立博物館
上野公園は春の陽気でポカポカ。上野動物園は休園中でした。お客さんのいない動物園で、動物たちはどんな日々を過ごしているんだろうと思いをはせながら、東京国立博物館へ向かいました。
東京国立博物館は、基本事前にチケット購入(私はセブンイレブンで買いました)。チラシには事前予約制とあるので当日券が存在するのかどうかは謎なのですが、「当日券売り切れ」と入り口に表示がありました。
館内は、人数は制限しているとは思いますが、空いてはいないという印象です。
しかし国立博物館はいつ行っても混んでいるので、いつもよりは、やっぱり少なめ。
今回は現存する鳥獣戯画(正確には鳥獣人物戯画というそう)の甲・乙・丙・丁巻が全て見られる展示となっていました。
有名なのは動物たちが相撲したり、弓を射ったり、法要したりする様子が描かれた甲巻。
館内に入ってすぐに全編が動画で上映されていたり、複写での解説があったり、少しずつ準備運動をして、いざ原画へ!
10分ほど並んで…動く歩道(平らなエスカレーター)で、見ることができました。動く歩道の速度はもちろんゆっくりですが、鑑賞するにはもうちょっとゆっくりでも良かったかもしれません。
絵がちょうど良い角度に傾けられていて、まるでガラスが無いように感じられるのもよかったです。
描かれている動物たちは生き生きとしていて、楽しそう。
甲巻は、平安時代末期から鎌倉時代初期に描かれたとされていますが、こんなに昔から、人々の想像の中で、動物たちはこんなに生き生きと戯れていたんですね。
昔話の影響か、猿には「悪」の印象が私にはあって、ついそういう目で見てしまいがちなのですが、猿がお坊さん役をやっているところをみると(この鳥獣戯画はおそらくお寺に奉納されたものだし)、昔は悪いイメージはなかったのでしょうか。
それとも、隠された意図があるのでしょうか。(なんとなく、お坊さんの猿はあくどい顔のようにも見えます…。)
詞書(ことばで書かれた説明)が何も残っていないので、見る者それぞれが想像するしかありません。
一説によると、あるシーンで、猿が蛙を殺して(?)おいかけられているのではないかという解釈があるようです。
しかし、それにしては猿の顔は呑気な顔なのです。
追いかけている兎も笑っているし、ひっくり返ってる蛙をみている兎も笑っている。先にも書いたように、出てくる動物たちはみんな「楽しそう」なのです。
私は、みんなが遊びに興じている、または、役を演じているという印象を持ちました。
絵巻という舞台で、それぞれが役者となって芝居をしているように見えたのです。
みなさんは、どう感じられるでしょうか。
鳥獣戯画の甲巻にオリジナルの物語をつけた絵本があります。
この物語の中でも、猿は悪者として描かれています。
法要の場面は、蛙のお葬式らしいです。なんとまあ。
いろんな解釈があって、想像力が刺激されますね。
もものこぶんこには旧版の正方形の絵本がありますが、2021年の新版では、長方形のサイズになっています。旧版は絵の下の白の余白に字を配置していますが、新版は絵の中に字が配置されることによって、絵が大きくなっているところが、大きな違いかと思います。
物語の構成上、絵の順番や出てくる場面は絵巻そのものとは違いますし、「高円寺」の印が反転していることからわかるように、ところどころ絵が反転されているのも特徴です。
美術館のお話に戻って。
甲巻以外の巻は動く歩道ではなく自分で動いて見るようになっていました(つまり普通の美術館と同じ)。
「これも動く歩道にすればよかったのでは…」「予算の問題かも」と近くにいたカップルが話していました。
動物図鑑のような乙巻に描かれた象や麒麟、竜などの絵も生き生きとしていました。
でもやっぱり甲巻が白眉という感じがします。
会場内では所々で鳥獣戯画の動物たちがアニメーションになって投影されていたり、アイキャッチも可愛かったり。チラシのビジュアルも派手派手しくて、「楽しい」がいっぱいの展示でした。
グッズも充実。グッズには手を出さないと決めているのに、マスキングテープ買ってしまった…。
そして、これ買いました。これで手元に鳥獣戯画を置いておける…!
緊急事態宣言を受けて、東京国立美術館も休館するようです。
多くの人に見てほしい展示です。
早く再開されますように。