「100%ORANGE オレンジ・ジュース」展 at千葉県立美術館

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100%ORANGE オレンジ・ジュース展 at 千葉県立美術館

大好きな100%ORANGEさんの展示ということで、行ってきました、千葉県立美術館。

千葉市美術館と勘違いしてました。間違えそうになりました。

 

千葉からはばたく新世代アート展 千葉の新進作家vol.2 100%ORANGE オレンジ・ジュース - 千葉県立美術館 (chiba-muse.or.jp)

 

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初期のポストカード作品、数々のパッケージデザインの仕事、広告ポスターの仕事、絵本の原画など、100%ORANGEの歴史がみられる展示になっていました。

ポストカード、今も大事に持っているものもあって、感動。

 

新潮文庫のカバーについている応募券を集めて送るともらえた、Yonda?のグッズも。

応募券を必死で集めた思い出…。

あのグッズのために、新潮文庫めっちゃ読んだ人も多いのでは…。私も…。

今はパンダから、ロボットのキャラクターキュンタになっているんですね。

 

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↑当時お金がなくて買えなかった、アフターヌーンティーとのコラボデザインのクッキー缶も。

大人になった今なら買えると思うので、復刻を希望。

 

ボルビックのパッケージデザインもされていたのですね。

他の作品と感じが違うけれど、洒脱で生活になじむデザインで素敵です。手元におきたいデザイン。

 

作品それぞれに添えられた、100オレさん(勝手にそう呼んでいる)直筆コメントも趣深い。こんな風に考えてお仕事をされていたんだな…と知ることができました。

 

映像作品、wowowシネフィルの、短い宣伝動画は初めて見ました。すごいかわいい。

ウェブでも見れますやん!! どうか見てください。


www.youtube.com

 

 

第二展示室では絵本の原画もたくさん。

それから、アニメDVD作品「100%ORANGEホームメイド・アニメーション」も全編大画面で見られました。

もちろん持ってるよう…。

 

 

 

やっぱり好きです。100オレさん。

こんな絵を描きたいと思わせてくれた作家さんです。

 

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千葉県立美術館から歩いてすぐのところは、港! たそがれた~。

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勝手に振り返る、100%ORANGEと私の思い出の歴史

さてここからは私の思い出話にお付き合いください。(時系列むちゃくちゃです)

100%ORANGEさんの作品に初めて出会ったのは20年以上前、東京のお台場の出店ブースみたいなところで売ってたTシャツ。

このTシャツを見た瞬間、ひとめぼれ。(そのあと自分の中で空前のプリントTシャツブームが訪れた)

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その少しくらいあとにniftyで展開されていた「ドーナッツ!」というキャラクターたちと出会う。

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あの時ちょっと意味わからなかったけど、グループラインの先駆けみたいなウェブサービスのイメージキャラクターだったような。

 

そのサービスは全く使わなかったけど、毎週のように更新されるマンガ(アニメ?)をめっちゃ楽しみにしていました。

携帯(ガラケー)の待ち受けがダウンロードできたり、絵本化されたりもした。

絵が好きすぎて、めっちゃ模写してた。

 

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ポストカードはいったいどこで手に入れたんでしょうか…?覚えていませんが今も大事に持っています。

学研の絵本雑誌pookaの表紙もされていましたね。Pooka…めっちゃ懐かしくてエモい…。

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ルージールウ、という雑貨メーカーから、缶バッチやグッズが発売されていて、大阪にはお店がなかったので通販で取り寄せたり…。(アメ村のビックステップに取扱店があったんですけど、あまり品数は多くなかったです)

(これももう錆びちゃってるのもあって、でも捨てられない)

ピンバッチは吉祥寺のトムズボックスで買ったんだ!!ああ(懐かしすぎて涙)。

ポスターもありました。

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錨といるか社というところで通販で購入したマウスパッドはいまだに現役!!!

めっちゃかわいくないですか…。

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そしてそして、「Small Circle Parade」(アンビデックス系でした!今も好きだアンビデックス)というアパレルブランドがありまして、100%ORANGEさんの絵のTシャツをメインに取り扱っていた…と思う…。

これも、大阪にはお店がなくて、東京まで買いに行った思い出……。

「スモール・サークル・パレード」っていう名前からして優勝じゃないですか?

もうシミができて着られないけど捨てられない宝物…どうすれば……。

このようなイラストが入ったTシャツがたくさん売っていた↓

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新潮社のyonda? のキャラクターを担当し始めたころからは、どんどん人気がうなぎのぼりになって行った気がします。

もちろん新潮文庫買いまくりシール集めまくり(というほど集めてないけど)で、

マグカップ(パラパラ漫画付き?)、カレンダー(これも4コマ漫画がいっぱい載っていてすごく豪華だった。金の箔押しのページとかもあったもん…)、ガムテープなど、手に入れました。

マグカップは今も現役。職場で使っています。

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大阪天満橋にあるギャラリーカフェ、14thmoonで開催された『スパゲッティになりたい』の原画展にも行きました。

これが大阪初原画展だったのでは?

嬉しすぎて初めて同じ絵本を複数冊買った。

 

恵文社一条寺店で原画展されてたこともありましたね。

絵本や漫画もいろいろ購入しました。

映画「アメリ」のノベライズの絵もやってたんだ!もーおしゃれで大好きだった。

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絵本もたくさん出されている100%ORANGEさん。

特に好きなのは……。

 

 

 

読み物のイラストを担当された作品、『すてきなのはらのけっこんしき』も好きです。

 

 

 

ずーっと同じ作家さんを好きでその仕事を追いかけていられるのは幸せなことですね。

こんなに長く好きとか…。

いや、実のところ高校の時くらいから好きで現在も好きなものが多いんです。

しつこいんです、私。

 

「ぐりとぐら しあわせの本」展at PLAY!MUSEUM

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ぐりとぐら しあわせの本」展

「おはなしの世界に入ってみたい……!」

多くの子どもや大人が思い描く夢だと思います。

そんな願いをかなえてくれるのが、PLAY!MUSEUMで開催中の「ぐりとぐら しあわせの本展」

ぐりとぐら』の絵本の世界が、大きくなって飛び出して、絵本の中に入った気分が味わえます。

とりあげられているのは、「ぐりとぐらのうみぼうず」「ぐりとぐらのおきゃくさま」「ぐりとぐらのえんそく」そして「ぐりとぐら」!の名シーン。(ほかにもあったかも?)

 

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まさに絵本に入っていくような入り口…。

 

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うみぼうずと泳いだり

 

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くまのチョッキを編んだり。


もちろん、写真撮影OK!小道具もあって楽しい。

ぐりとぐら」のあの大きなカステラも、もちろんあります!

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カフェでは「ぐりとぐら」のカステラがメニューにあって、味覚でも絵本の世界を味わえます。

 

グッズもたくさんありました。

ぐりとぐらの名シーンがギューッと描かれたハンカチがかわいい!!

めちゃ私好みでした。

 ぐりとぐらの青と赤の帽子も売っていて、写真撮影にぴったり。

 

 

ここで、うちのぐりとぐらを。

 

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後ろ姿で失礼します。

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ああ、関西に住む彼らをここにワープさせたい…!

と思わずにはいられませんでした。

PLAY! MUSEUMとPARK (play2020.jp)

 

「みみをすますように 酒井駒子展」at PLAY!MUSEUM

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みみをすますように 酒井駒子展 


立川のPLAY!MUSEUMで開催中の「酒井駒子展」
一時休館していましたが、再開されたみたいです。

 

前回のアーノルド・ローベル展の時も思ったけれど、ここの美術館は、展示方法がとても素敵。

会場に入ったら、木の、何これ、タワー?みたいなのが、林立している。膝丈くらいのそれを覗き込むと、原画が見られるようになっています。
木の什器が効果的に使われていて、円状になっている什器も。
言葉では表し難い展示方法。

額に絵が入っていて壁にかけられているというのが、私の知っている絵の展覧会ですが、全く違う、新しい展示方法に刺激を受けます。

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不思議な什器に絵が展示されています…

 

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覗き込んで絵を見ます。

 

酒井さんは、段ボールをキャンバスにして絵を描かれることも多いのですね。『BとIとRとD』の原画も段ボールに描かれていましたが、レースやスタンプなども使われていて、原画で見るとより効果的に感じられました。
段ボールの粗雑な感じと、酒井さんの繊細な絵が、絶妙に調和している気がします。お互いを和らげあうみたいな感じ…?

 

 

よるくまの展示は、黒い布で囲われた芝居小部屋のような中で展示されていて雰囲気たっぷりです。

 

よるくま

よるくま

Amazon

 


入口でファイルを渡され、
「4箇所に言葉が印刷された紙があるので、それを集めてファイルに入れてお持ち帰りください」と言われました。
会場のところどころに置かれた紙には、絵本に出てくる言葉が手触りの良い美しい紙に印刷されていました。
白い紙にインクなしで活版印刷してあるようなものも。
繊細…っ!

 

今回も、半分くらいは写真撮影オッケーでした。
そこもPLAY!MUSEUMのすごいところだなあと思います。

 

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同時開催「ぐりとぐら」展については、次回書きます。

 

ありがとう、エリック・カールさん

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ありがとう、エリック・カールさん

絵本作家のエリック・カールさんが、2021年5月23日に逝去されたとのこと。

ご冥福をお祈りいたします。

 

エリック・カールさんと言えば、『はらぺこあおむし』!。

カラフルな色、穴の開いたしかけ、美味しいもの、成長することの喜び……

途中でお腹が痛くなるところにだった、子どもは共感するんだと思います。(子どもの頃って、よくお腹が痛くなりましたもの…)

すべてがパーフェクトな絵本。

 

 

はらぺこあおむし

はらぺこあおむし

Amazon

 

新沢としひこさん作曲の歌も大好きです。子どもたちと歌えば、絶対に「げっつようび~」と誰もが口ずさんでしまう!

魔法のような歌!

 

 

 

虫好きの親戚男児にお手紙を渡されました。

何?と思ってみたら、こんなの。

 

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お手紙もらった

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あおばせせり に ちかい


 

はらぺこあおむしは、あおばせせりに似ている」という意味だそうです。

「だってねえねって、絵本が好きでしょ? だから教えてあげようと思って」だって。

絵本好きの私にこそ、この情報が必要だと思ってくれたんだな。

子どもと共有できるものがあるのは、本当に嬉しいこと。

 

『パパ、お月さまとって!』も、しかけのある絵本。

お父さんがお月さまを子どものためにとってくるために、奮闘します。どれだけ遠いところにお月さまがあるか、どれだけ大きいのかを見せるために、しかけが効果的に使われています。

お月様が大きく開くページは、昔は折りたたんであるだけだったのに、現在の版では工夫された折り方で迫力が増しました。

そういう改訂って良いなあと思います。質の良い表現へのあくなき探求。

 

 

 

 『できるかな?あたまからつまさきまで』も、とっても面白い絵本です。

(あまり知られてない気がするのは、タイトルが長いからだと、私、思うの…。長いタイトルって、魅力的なんですけど、検索するとなると難しい!)

 

動物が、自分の動きを「君はできるかな?」と問いかけてきます。

「できるかな?」って子どもたちに問いかけて、みんなで一緒に身体を動かしながら楽しめる絵本。

 

 

 

新沢としひこさんはこの絵本にも歌をつけています。(上で紹介しているCD「エリック・カール絵本うた」に収録されています)

最初はのんびりした曲調なのに、「できるよできる!」のところから急にアップテンポになる展開、大好きです。

私は、「こんなことできるんだろうか…?」と戸惑ったときに、この曲を歌います。

自分を励ますために「できるよできる!!」と歌うと、できる気がしてきます。

おすすめです。

 

みなさんの好きなエリック・カールの絵本はなんですか??

 

「国宝 鳥獣戯画のすべて」展 at 東京国立博物館

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国宝 鳥獣戯画のすべて展

上野公園は春の陽気でポカポカ。上野動物園は休園中でした。お客さんのいない動物園で、動物たちはどんな日々を過ごしているんだろうと思いをはせながら、東京国立博物館へ向かいました。

東京国立博物館は、基本事前にチケット購入(私はセブンイレブンで買いました)。チラシには事前予約制とあるので当日券が存在するのかどうかは謎なのですが、「当日券売り切れ」と入り口に表示がありました。

館内は、人数は制限しているとは思いますが、空いてはいないという印象です。

しかし国立博物館はいつ行っても混んでいるので、いつもよりは、やっぱり少なめ。


今回は現存する鳥獣戯画(正確には鳥獣人物戯画というそう)の甲・乙・丙・丁巻が全て見られる展示となっていました。
有名なのは動物たちが相撲したり、弓を射ったり、法要したりする様子が描かれた甲巻。

館内に入ってすぐに全編が動画で上映されていたり、複写での解説があったり、少しずつ準備運動をして、いざ原画へ!
10分ほど並んで…動く歩道(平らなエスカレーター)で、見ることができました。動く歩道の速度はもちろんゆっくりですが、鑑賞するにはもうちょっとゆっくりでも良かったかもしれません。

絵がちょうど良い角度に傾けられていて、まるでガラスが無いように感じられるのもよかったです。

描かれている動物たちは生き生きとしていて、楽しそう。
甲巻は、平安時代末期から鎌倉時代初期に描かれたとされていますが、こんなに昔から、人々の想像の中で、動物たちはこんなに生き生きと戯れていたんですね。

昔話の影響か、猿には「悪」の印象が私にはあって、ついそういう目で見てしまいがちなのですが、猿がお坊さん役をやっているところをみると(この鳥獣戯画はおそらくお寺に奉納されたものだし)、昔は悪いイメージはなかったのでしょうか。
それとも、隠された意図があるのでしょうか。(なんとなく、お坊さんの猿はあくどい顔のようにも見えます…。)
詞書(ことばで書かれた説明)が何も残っていないので、見る者それぞれが想像するしかありません。
一説によると、あるシーンで、猿が蛙を殺して(?)おいかけられているのではないかという解釈があるようです。
しかし、それにしては猿の顔は呑気な顔なのです。
追いかけている兎も笑っているし、ひっくり返ってる蛙をみている兎も笑っている。先にも書いたように、出てくる動物たちはみんな「楽しそう」なのです。
私は、みんなが遊びに興じている、または、役を演じているという印象を持ちました。
絵巻という舞台で、それぞれが役者となって芝居をしているように見えたのです。
みなさんは、どう感じられるでしょうか。


鳥獣戯画の甲巻にオリジナルの物語をつけた絵本があります。 

この物語の中でも、猿は悪者として描かれています。
法要の場面は、蛙のお葬式らしいです。なんとまあ。
いろんな解釈があって、想像力が刺激されますね。

もものこぶんこには旧版の正方形の絵本がありますが、2021年の新版では、長方形のサイズになっています。旧版は絵の下の白の余白に字を配置していますが、新版は絵の中に字が配置されることによって、絵が大きくなっているところが、大きな違いかと思います。
物語の構成上、絵の順番や出てくる場面は絵巻そのものとは違いますし、「高円寺」の印が反転していることからわかるように、ところどころ絵が反転されているのも特徴です。

 

美術館のお話に戻って。
甲巻以外の巻は動く歩道ではなく自分で動いて見るようになっていました(つまり普通の美術館と同じ)。
「これも動く歩道にすればよかったのでは…」「予算の問題かも」と近くにいたカップルが話していました。

動物図鑑のような乙巻に描かれた象や麒麟、竜などの絵も生き生きとしていました。
でもやっぱり甲巻が白眉という感じがします。

会場内では所々で鳥獣戯画の動物たちがアニメーションになって投影されていたり、アイキャッチも可愛かったり。チラシのビジュアルも派手派手しくて、「楽しい」がいっぱいの展示でした。

 

グッズも充実。グッズには手を出さないと決めているのに、マスキングテープ買ってしまった…。

そして、これ買いました。これで手元に鳥獣戯画を置いておける…!

鳥獣戯画 豆本をつくろう! ([バラエティ])
 

 

緊急事態宣言を受けて、東京国立美術館も休館するようです。
多くの人に見てほしい展示です。

早く再開されますように。

 

 

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【映画】「非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎」

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映画「非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎」

 

ヘンリーダーガーは、19世紀末にアメリカで生まれ、母を早くに亡くし、精神障害と診断されて父からも引き離され孤独な子供時代を送った。青年期以降、掃除夫として働く傍ら、たった1人で誰にも見せることのない「作品」を、半世紀以上もの間作り続けた。現代ではアウトサイダーアーティストとして広く知られている。

 

(児童書好きの人にとっては、石井桃子の評伝『ひみつの王国 評伝 石井桃子』の表紙絵に採用されたことも記憶に新しい) 

ひみつの王国: 評伝 石井桃子 (新潮文庫)

ひみつの王国: 評伝 石井桃子 (新潮文庫)

 

 

 「非現実の王国で」と名付けられたその作品は、ヴィヴィアン・ガールズという7人の女の子が、悪と戦うという1万5千ページにも及ぶ膨大な小説作品で(世界一長いとも言われている)、新聞や雑誌の女児の写真などから着想を得て描かれたとされる300枚もの絵からなる物語を表した画集もある。

 

その全てはヘンリーダーガーの死の間際に「発見」され、死後「評価」された。

 

ヘンリー・ダーガーの生涯を追ったこのドキュメンタリーを、私はもう10年以上前に見た。

ヘンリー・ダーガーが老人施設に入った際に部屋の整理を任され、作品を発見した、彼の住まいの大家は、彼に「すごいじゃない!」と言う。

しかしすでに死の淵にいた彼は「too late=もう遅過ぎる」と応える。

 

当時を振り返る大家のインタビューシーンを見て、私は衝撃を受けた。

自身が世間とかけはなれた世界に生きているからこそ生まれたとも言える彼の作品は、見る者を驚かせ、胸を打つ。

しかし彼自身はいわゆる幸せな人生をおくりたかったもしれないし(その証拠とも思えるのが生涯で何度も養子を求めているところ)、作品だって、自分が生きている間に認められないのなら(認められるとも思っていなかったかもしれないけれど)彼自身にとってはなんの意味もなく、全ては「遅すぎる」のだ。

 

彼の絞り出すような叫びを、この「too late」という言葉から私は感じた。

その時から、私は「too lateにはなりたくない」と、合言葉のように思うようになった。やれることや挑戦できることはすぐにやる、人生に後悔したくないから。ヘンリーダーガーの「too late」を、私が代わりにリベンジしてみせる、くらいの気概で(何様)色々なことをやってきたと思う。

 

でも、それでも、「間に合わない」ことはある。この10年を振り返ってみても、何もかもがあまりにも「too late」だった。間に合わなかったと何度も思った。

最近になってやっと、人生ってそんなものなのかもしれないと思えるようになってきた。それでもこれからも、私は「too late」に抗って生きていくと思うのだ。

 

 

 

「佐藤可士和展」 at国立新美術館

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佐藤可士和

 

乃木坂駅直結の国立美術館で、佐藤可士和展に。

 

企業ロゴを大きくしたり立体化した展示が圧巻。

整理が子どものころから好きだったという佐藤可士和が、撮っ散らかった顧客のニーズを聞いて、それを整理してデザインに落とし込んでいく様は見事。

大きな楽天パンダと写真を撮れるスペースがありました。

会場に流れる重低音のBGMがまたしゃれてた。

 

佐藤可士和展行く~」って友人に言ったら、「え?佐藤可士和ってまだ活躍してる??」と言われました。

確かに、『佐藤可士和の超整理術』が出版された年代頃に比べて、名前を聞く機会は減ったかも。

しかしですよ。

ユニクロ、GU、セブンイレブン、ツタヤ、イトーヨーカドー、日清、楽天…これらのロゴのデザインはすべて佐藤可士和が手掛けてる。(そう考えると無印がそうじゃないのが不思議なくらいだ)

日常生活を送る上で、これらのデザインを見ない日はないと言っても過言ではない。

私たちは毎日佐藤可士和デザインに触れて生活している。昔は革新的だったそのデザインが、現代では完全にスタンダードになったということ。すごい!怖さすら感じる!

佐藤可士和(のデザイン)は、すでにこの世界にとって「空気」になったということなのだ。

 

 

そこで思い出したのが『せかいでいちばんつよい国』という絵本。

 

せかいでいちばんつよい国

せかいでいちばんつよい国

 

 

ネタバレになりますが、ひとことでいうと「文化を司った者が国を制する」というおはなし。

 

強い軍隊で攻め込んで征服したはずが、軍隊のみんなもその国の文化にすっかりなじんじゃって、楽しく生活しちゃう。

文化は剣より強し(だからこそ強権下で芸術は弾圧にも遭うのでしょう)。

 

そう考えると、佐藤可士和は日本をある意味支配したともいえるのかもしれない。

彼のデザインは、私たちの生活にすっかり根付き、分かちがたいものになっているのだから。

それを悪だと言いたいのではないですが、そういうことに注意深くなる心は忘れずにおきたいと思います。

 

めっちゃフルネームで「佐藤可士和」と呼び捨てで書きまくってしまいましたが、現存するアーティストで日本人でってときはどう表記するのがいいのでしょうね。

敬称入れたほうがいいのかな…スミマセン。